2重トラップ(ダブルトラップ)の解消対策解説
更新日:2025.07.27
『KANSAIお風呂リフォーム.com』では、タイル風呂からユニットバスにリフォームしたいというお客様からご相談をいただいた時、必ずお客様にお伝えする注意事項があります。それが『2重トラップ(ダブルトラップ)現象』です。これは簡単に言うと、下水管の悪臭が室内にあがってこないようにするための臭い止めが2つ存在することで生じる空気だまりによって起こる『排水不良』のことです。
これは私が経験する限り既存のお風呂がユニットバスのお客様にはまず発生しない現象です。なぜならば新築時からユニットバスのお家には元々ユニットバスに内蔵されているトラップが1つあるだけで、新しいユニットバスにリフォームしても『2重トラップ(ダブルトラップ)』にはならないからです。注意しなければならないのは浴槽にトラップがついていないタイル風呂の方であり、この場合屋外の下水枡にトラップが仕込まれていているため新しいユニットバスのトラップと2重になるため『排水不良』が起こるのです。ただ、、難しいのは『2重トラップ(ダブルトラップ)』の状態でも『排水不良』が起こらないケースも多々あり、浴室リフォームの専門店としては非常に不本意ではありますが、お客様には「浴室リフォーム後に排水不良が起こる可能性があります。」とお伝えするしかないのが現実なのです。
今回の『お風呂リフォーム虎の巻』ではこの『2重トラップ(ダブルトラップ)』現象が発生した場合の解消対策を詳しく解説させていただき、お風呂リフォームをお考えの皆様にお役立ていただければと思っております。
目次ボックス
『2重トラップ(ダブルトラップ)』現象の仕組み
まず、トラップとは下水管からの悪臭をU字の排水管で水溜まりをつくることでブロックすることをいいます。つまり、『2重トラップ』とはそれが2つ存在することを指しており、上図をみていただければ分かるように、1次・2次トラップのの2つの水溜まり内、もっと言えば排水桝内に空気が充満してしまい、排水をしても膨張した空気が排水を押し返してしまう。これによって引き起こされるのが『2重トラップによる排水不良』を引き起こす仕組みなのです。
上の画像がユニットバスへのリフォーム後、実際に『排水不良』が起こった様子です。浴槽にお湯が残り、2,3分かけてゆっくり排水されます。
この問題の解消対策を次章でお伝えしていきたいと思います。
『2重トラップ(ダブルトラップ)』現象の解消対策解説
では、『2重トラップ(ダブルトラップ』現象が発生した場合の解消対策としてどのような工法があるでしょうか?
【対策①】塩ビ製通気口ふた
最もポピュラーで安価な対策は屋外の会所枡のフタを『塩ビ製通気口ふた』に取替える事です。これは会所枡内にたまった空気を通気口付のフタに取替えることで『排水不良』の原因である空気を押し出してしまうという対策になります。
これによって『排水不良』が解消されるケースはもちろんあり、まずやるべき対策となります。ただ、実際【対策①】で解消されるのは稀であり、解消しない場合は根本的な対策が必要となります。それが【対策②】
【対策②】1次トラップの解体撤去からの会所枡の取替
これは『2重トラップ(ダブルトラップ)』現象の原因である1次トラップを撤去し、トラップなしの会所枡に新調する方法です。大が掛かりな工事であり費用も発生しますが、これによって『排水不良』は解消されます。下記にこの工事について実際の画像を見ながら解説していきます。
排水不良の主な原因は↑画像の排水口奥の小さな水たまりにあります。これで下水からの臭いを屋内に引き込まないための臭い止めを水溜まり部分で行っています。
第一工程としてまずは屋外既存の会所桝を掘り起こすところから始めます。
ハツリ機を使って犬走を割っていきます。大きな音が発生するためご近所様への配慮が必要です。
撤去するべき会所枡が見えてきました。
掘り起こした問題の会所枡がこちらです。
U字の部分が屋内への臭い止めとなる水溜であると同時に、空気詰まりの原因です。排水口から見えていた水たまりはこのU字部分です。
新しい会所枡はこちらです。U字はなく、そのまま空気が下水管に流れるストレート構造になっています。
今回の事例では川上にあるキッチンの排水管とジョイントします。
この機会に老朽化に備え給水管(黒)も取替できる部分は新調します。
以上で2重トラップからの会所枡の取替が完了しました。
ここからは犬走をモルタルで復旧していきます。
モルタル表面をきれいに整えて犬走の復旧も完成しました。
空気が溜まることもなく、勢いよく排水が流れています。これで『2重トラップ(ダブルトラップ)』による『排水不良』が解消されました。
1週間後モルタルが乾いた様子。既存の犬走と色は変わってしまいますが、浴室の排水不良は完全に解消が確認出来ました。
洗面化粧台の2重トラップ(ダブルトラップ)対策
浴室と同じように洗面化粧台でも『2重トラップ(ダブルトラップ)』による『排水不良』が起こり得る場合はあります。浴室に比べて排水する水量そのものが少ないので、目立った『排水不良』はほとんど見られませんが、排水後に時間をおいて洗面化粧台の排水口から『ボコボコボコッ!』という音が出てくるケースが考えられます。これも新しい洗面化粧台に付いている2次トラップと屋外の1次トラップの間の空気だまりが排水の圧力により時間差で空気が抜ける時の音であることが考えられるのです(これはキッチンリフォームでも起こることがあります)。
この問題を解消するための対策として挙げられるのは『ドルゴ通気弁』を洗面内のトラップに取付して空気を抜いてしまうという方法があります。
↑の画像は洗面化粧台の排水管のサイズに合わせた『ミニドルゴ』です。
洗面化粧台に設置したミニドルゴがこちらです。排水しながら空気が抜ける構造になっています。通常時は排水からの臭いが上がってこない仕組みになっています。
洗濯機排水の『排水不良』についての対策
洗濯パンの『排水不良』や排水がトラップから溢れる『オーバーラップ現象』が起こるのは、私の20年に及ぶ施工管理経験の中でも2回しかありません。まさに10年に1回の確率ともいえますが、この問題が生じる共通点は2階にあった洗濯パンを浴室や洗面化粧台ごと、1階に移設する時に起こっています。ここからは経験則からの予想であり、厳密な事実究明にはなり得ませんけれど、2階からより下水管よりの1次トラップ側に、浴室・洗面・洗濯排水が近づくことで、3箇所の同時排水時に空気たまりを解消できず『排水不良』を引き起こしていると考えています。
この洗濯排水における『排水不良』についても空気だまりを抜く『通気ドルゴ』が有効な対策となります。
洗濯排水時に排水口から水が溢れるオーバーラップが起こる場合は、原因となる排水管の空気たまりを抜くドルコ通気弁を取付けします。
設置の様子がこちらです。排水しながら空気を抜く形状になっています。洗濯パンの『排水不良』をスムーズに改善することができました。
排水管入替工事についての解説※2重トラップと間違えやすいケース
最後に2重トラップ(ダブルトラップ)と同じ様な排水不良が起こりながら、
実は原因は2重トラップではないケースについて解説させていただきます。
こちらの事例は当社がさせていただいた
お風呂のリフォーム工事から3年後、
徐々にお風呂リフォーム後に排水のスピードが遅くなり、
浴槽の排水と洗い場のシャワーの排水を同時に行うと
新しいお風呂の排水口から排水がオーバーラップしてくるという
現象が起こったケースです。
こちらのお客様からご連絡をいただいた時、
『今更の2重トラップ(ダブルトラップ)か?』と思ったのが
正直なところではありましたが、現場を見て驚きました。
それは⇑の画像でも分かるように排水の枡まわりの土が
蟻地獄の様に陥没し始めていました。
その他の枡のまわりも陥没が始まっていました。
これは枡からの少量の漏水が時間を掛けて
まわりの砂地を削り取り、川上から川下まで排水する
『水勾配』を確保出来なくなったため、
排水不良が起こってしまったケースです。
一番川上の枡はそれ以下の枡は完全に詰まっていました。
そちらの画像は衝撃的過ぎますので
敢えて非公開にさせていただきます。
こちらのお客様のお家は築45年以上経っており、
当時の枡は⇑の画像にあるような塗り枡と呼ばれる鋳物です。
半世紀近い経年変化を経てその他の枡に
小さな割れが発生し、まわりの砂地を
徐々に流して水勾配が確保出来なくなったケースです。
ゆっくり排水不良が起こる点では
2重トラップ(ダブルトラップ)現象に似ていますが、
これは排水管全てを入替しなければならないケースとなります。
まずは手掘りで既存の排水管全てを掘り起こして
それら全てを撤去します。
この間お風呂だけでなくトイレも含めた
全ての排水が不可となるため、
お客様にはしばらく娘さんのお家に避難いただきました。
水勾配を考えながら新しい排水管を繋ぎ込みします。
斜めに排水管を繋ぐ事で排水の勢いを失わない様に
ひと手間かけさせていただきました。
排水のL型部分には新たに会所枡を設置し、
水勾配をもう一度調整させていただきます。
手掘りで掘り起こした砂と土は埋め戻しで使うため
そのまま白土嚢に詰めて残しておきます。
最後に白土嚢に詰めておいた土と砂を戻して、
お客様の排水管全てを入替させていただきました。
在来工法のタイル風呂のお風呂リフォーム工事において、
2重トラップ(ダブルトラップ)以外にも
根本的な排水管が正常かは疑う必要があります。
こちらのお客様のケースは、
3年前に浴室リフォーム工事をさせていただいた当時は
当社が確認した限り枡まわりの陥没は無く、
その後に起こった珍しい事例といえるかも知れません。
同じ塗り枡の会所であってもあるいは
コンクリートの犬走でしっかり固定されていれば
起こらなかった排水不良かも知れません。
しかし、半世紀近く経って未来永劫に正常なままとの考えは
さすがに無理がありますよね。
それを分かっていただけるお客様で本当に良かったと思います。
以上、浴室リフォーム工事における
2重トラップ(ダブルトラップ)現象に対する
『お風呂リフォーム虎の巻』でした。
ご参考頂ければ幸いです。ありがとうございました。